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冷凍食品の海外輸出では、日本国内での出荷準備から国際輸送、輸入国での通関・配送まで、国内取引にはないさまざまな費用が発生します。また、輸出先によって関税率や輸入手続きも異なるため、物流費だけを見ていると、実際に必要なコストを見落とすことがあります。本記事では、冷凍食品の輸出で発生しやすい費用を一覧で整理したうえで、米国向けを例に関税の調べ方と計算方法を解説します。

この記事でわかること

  • 冷凍食品の輸出コストは「日本国内」「国際輸送」「輸入国側」の3段階で整理できる
  • 食品輸出の関税は、HSコード(国際的な商品分類番号)で品目を特定し、輸出先国の税率表で確認する
  • 米国向けでは、一般関税に加えて追加関税や通関関連手数料がかかる場合がある
  • 冷凍品は輸送時間も販売可能期間や在庫コストに影響するため、物流設計まで含めて考える必要がある

冷凍食品の海外輸出にかかる費用一覧

冷凍食品の輸出では、国内での出荷準備、国際輸送、現地到着後の対応まで、それぞれの段階で費用が発生します。

冷凍食品の海外輸出にかかる主なコスト
段階主な費用項目押さえたいポイント
日本国内輸出仕様のラベル・包材の作成、冷凍倉庫での保管料、港・空港までの冷凍輸送費、輸出通関の手数料、証明書の発行費用輸出先の表示ルールに合わせた包材の作り直しなど、初回特有の費用が発生する場合がある
国際輸送海上運賃(リーファーコンテナ)または航空運賃、燃油などの割増料金、貨物保険料輸送手段や貨物量によって費用が変わる
輸入国側関税、輸入通関・税関の手数料、現地の冷凍倉庫・配送費、ディストリビューターのマージン現地到着後の費用が見積もりから漏れやすい

リーファーコンテナとは、冷凍・冷蔵機能を備えた海上輸送用のコンテナです。航空便は輸送時間を短くしやすい一方、一般に海上輸送より費用が高くなるため、商品の数量や納期に応じた使い分けが必要です。

また、売り手と買い手のどちらがどの費用を負担するかは、インコタームズ(Incoterms®:国際商業会議所が定める貿易条件)によって変わります。

例えば、FOB(本船渡し)では、原則として売り手は指定された輸出港で貨物を船積みするまでの費用とリスクを負担します。一方、DDP(関税込み持込渡し)では、売り手が輸入国側での輸入通関や関税、指定場所までの配送まで負担します。

輸出価格を組む際は、物流費だけでなく、契約上どこまでを自社が負担するのかも確認しておきましょう。

実際の輸出見積もりで分かった、見落としやすい費用

実際に輸出物流の見積もりを取得してみると、単純な海上運賃や航空運賃だけではなく、輸出通関から保管、ターミナル関連、各種書類・手続きまで、さまざまな費用が発生することが分かります。

例えば、輸出通関料やターミナルチャージ、セキュリティチャージに加え、航空輸送ではAWB Fee(航空運送状関連費用)やAMS Fee(米国向け事前申告関連費用)などが発生する場合があります。

また、保税取り扱いや冷凍保管料、貨物によっては爆発物検査料、税関検査が発生した場合の検査料や立ち会い費用などが加わることもあります。

こうした費用は、一つひとつを見ると大きな金額ではないケースもありますが、積み重なることで輸出コストに影響します。特に初回の輸出では、運賃だけを見て予算を組んでしまうと、後から想定していなかった費用が追加されることがあります。

実際の輸出では、見積書に記載された費用項目を一つずつ確認し、「どのタイミングで」「どの条件で」発生する費用なのかを把握しておくことが重要です。

関税はいくら?米国向けの調べ方と計算例

関税を調べるときは、まずHSコードで品目を特定します。

HSコードは、国際的に共通する品目分類番号です。基本となる6桁までは国際的に共通ですが、それより細かい分類は各国で異なります。

同じ冷凍食品でも、魚、肉、調理済み食品などで分類が分かれ、適用される税率も変わります。米国向けの場合は、HSコードだけでなく、HTSUS(Harmonized Tariff Schedule of the United States:米国の関税率表)で最終的な分類と税率を確認します。

各国の関税率を調べる方法として、ジェトロの「WorldTariff」も利用できます。WorldTariffでは世界178カ国・地域の関税率を検索でき、日本の居住者はジェトロ経由で無料で利用できます。

品目ごとの輸入規制や必要な手続きについては、ジェトロの「日本からの輸出に関する制度」も参考になります。

米国の関税はどうなっている?

米国では、2026年に関税制度が大きく動いています。

2026年7月24日から、強制労働に関する通商法301条に基づく追加関税が適用されています。日本産品については、対象品目の一般関税率(MFN税率)が12.5%未満の場合、追加関税と合わせて合計12.5%となるよう設定されています。

一方、一般関税率が12.5%以上の場合、今回の301条追加関税は0%です。対象外となる品目もあるため、実際の輸出ではHTSUSの最新情報を確認する必要があります。

そのため、米国向けの関税は「日本産品は一律12.5%」と考えるのではなく、品目ごとに確認することが重要です。

米国では関税以外の費用もかかる

輸入時には関税のほか、通関関連の手数料も発生します。

12.5%

一般関税率が12.5%未満の対象品目について、301条追加関税を合わせた合計関税率

0.3464%

MPF(Merchandise Processing Fee:商品処理手数料)の料率

0.125%

HMF(Harbor Maintenance Fee:港湾維持手数料)の料率

MPFは、輸入貨物の価額に対して0.3464%がかかり、2026年10月1日から始まる2027会計年度では、1件あたりの下限が34.58ドル、上限が670.86ドルです。HMFは海上輸送の商業貨物を対象に0.125%がかかります。

また、米国向け食品では、関税とは別に輸出前の規制対応も必要です。食品を製造・加工・包装・保管する施設は、原則としてFDA(Food and Drug Administration:米国食品医薬品局)への施設登録が必要で、海外施設の場合はU.S. Agent(米国代理人)の指定も求められます。

そのため、輸出コストを試算するときは、関税や物流費だけでなく、FDA登録やU.S. Agentの手配、表示対応、輸入者・通関業者との調整なども考慮しておきましょう。

米国向け関税・手数料の計算例

一般関税率3%の冷凍食品を、商品価格1万ドル、海上輸送で輸出するケースを考えます。

301条追加関税と合わせて12.5%になると仮定すると、以下のように計算できます。

米国向け関税・手数料の計算例(一般関税率3%、商品価格1万ドル、海上輸送)
項目計算金額
関税(一般関税3%+301条追加関税9.5%)1万ドル×12.5%1,250ドル
商品処理手数料(MPF)1万ドル×0.3464%34.64ドル
港湾維持手数料(HMF)1万ドル×0.125%12.50ドル
合計-約1,297ドル

このケースでは、関税・通関関連手数料として約1,297ドルがかかります。

実際には品目ごとに一般関税率が異なり、追加関税の対象外となる品目や、別の追加関税が適用される品目もあります。上記はあくまで計算方法を理解するための一例です。

コールドチェーンの課題と輸出コストの抑え方

冷凍食品では、運賃だけでなく「どれだけ時間がかかるか」もコストに影響します。

コールドチェーンとは、生産から消費まで一定の低温状態を保ったまま商品を運ぶ物流の仕組みです。輸送時間が長くなると、冷凍保管期間も延び、現地で販売できる期間が短くなることがあります。

特に海外輸出では、国や取引先によって、納品時点で一定以上の賞味期限が残っていることを求められる場合があります。

例えば、賞味期限6か月の商品を出荷してから販売開始までに2か月かかれば、現地で販売できる期間は残り4か月です。さらに現地倉庫や流通に時間がかかれば、販売可能期間はさらに短くなります。

そのため、輸出コストを考える際は、運賃だけでなく、在庫や賞味期限まで含めて考えることが重要です。

輸出コストを抑える3つの方法

①

輸送手段を使い分ける

テスト販売や商談用の少量輸送では航空便を使い、販売量がまとまった段階で海上輸送へ切り替える方法があります。販売量と納期に応じて輸送方法を設計しましょう。

②

混載を活用する

コンテナ1本に満たない量であれば、複数社の貨物をまとめて輸送する混載という方法があります。

冷凍品は温度管理が必要なため、利用できる混載ルートが限られる場合もあります。輸送数量や出荷頻度を踏まえ、早めに物流会社へ相談しておくと安心です。

③

補助金を活用する

輸出用包材への切り替え、海外商談、現地調査など、輸出の立ち上げ時にはさまざまな初期費用が発生します。

こうした費用について、国や自治体などの補助事業を活用できる場合があります。公募時期や対象経費、採択条件は事業ごとに異なるため、輸出計画と合わせて確認しましょう。

実際の海外輸送で行った保冷資材の開発

過去には、冷凍食品の海外輸送に向けて、使い捨てを前提としたオリジナルの保冷資材を開発した経験があります。

開発では、単に既存の保冷材を組み合わせるのではなく、外箱そのものの素材や構造、断熱材の応用、冷気を効率的に保持・循環させる仕組みなど、複数の要素を組み合わせた保冷設計を検討しました。

一つの仕様を作って終わりではなく、素材や厚み、配置、組み合わせなどを変えながら、数百パターンに及ぶ試作・検証を実施。その結果、輸送中の温度変化を抑え、通常の輸送条件では温度管理が難しい冷凍食品でも、一定の品質を維持したまま流通させるための保冷性能を実現しました。

こうした経験から、冷凍食品の海外輸送では、既存の物流手段を選ぶだけでなく、商品の特性、輸送距離、外気温、梱包仕様などに応じて保冷方法そのものを設計することが重要だと考えています。

まとめ

冷凍食品の海外輸出では、国内での出荷準備、国際輸送、輸入国での通関・配送まで、それぞれの段階で費用が発生します。

輸出コストを試算する際は、海上・航空運賃だけでなく、通関、保管、ターミナル関連費用、各種手数料なども含めて確認することが重要です。

関税はHSコードで品目を特定し、輸出先国の税率表を確認します。米国向けの場合は、HTSUSで品目を確認したうえで、一般関税や追加関税の対象かどうかを判断します。

また、冷凍食品の場合、輸送時間が現地で販売できる期間にも影響するため、運賃だけでなく賞味期限や在庫まで含めて輸出価格を考える必要があります。

輸送費、関税、現地費用に加えて、包材や規制対応、在庫リスクまで把握しておくことで、輸出後に想定外のコストが発生することを防ぎやすくなります。

この記事の監修者Blue Polaris COO五十嵐 圭佑

三菱食品で10年間、冷凍・チルド帯食品の流通実務に従事し、年間20億円の売上を構築。デイブレイクでは米国・欧州・アジアへの販路開拓を牽引し、エンド・ツー・エンドのグローバル・コールドチェーンを確立した。農林水産省等の輸出関連補助金の採択実績も豊富。プロフィール ›

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