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海外への展開は、大手企業だけのものではありません。
地方の食品メーカーにも、海外で勝てる可能性があります。産地と製法のストーリー、小ロット・専門特化、受け継がれた技術は、海外で商品を選んでもらう理由になるからです。
人材や資金が限られていても、冷凍技術と外部パートナーを活用すれば、強みを海外へ届ける道は開けます。本記事では、地方メーカーが海外で勝てる3つの理由、つまずきやすい4つの壁と越え方、海外へ商品を売るための4ステップを解説します。
この記事で分かること
- 2025年の農林水産物・食品の輸出額は1兆7,005億円となり、13年連続で過去最高を更新
- 地方メーカーが海外で勝てる理由は「産地と製法のストーリー」「小ロット・専門特化」「受け継がれた技術」の3つ
- 距離と鮮度の課題には冷凍技術を、人材・価格・認知の課題には外部パートナーの知見と実行力を活かす
- 「強みの言語化 → 市場と売り先の絞り込み → 小さなテスト輸出 → パートナーと拡大」の4ステップで進める
地方の食品メーカーが海外への展開で勝てる3つの理由
地方の食品メーカーが海外で勝てる理由は、商品に固有の価値を持っていることです。産地や製法の背景、特定の商品へのこだわり、長年磨いてきた技術。こうした強みを評価する市場と売り先を選べば、地方メーカーにも勝ち筋が生まれます。大切なのは、「自社の強みは何か」に加えて、「誰が、どのような場面で、その価値にお金を払うのか」まで考えることです。
2025年の農林水産物・食品の輸出額は1兆7,005億円でした。前年から12.8%伸び、13年連続で過去最高を更新しています。※1国内だけでなく世界を市場と見れば、地方メーカーにも成長の余地は大きく広がっています。
①
産地と製法のストーリー
商品を選ぶ理由をつくれる
どこで、誰が、どのように作ったのか。原料の産地や地域の食文化、受け継がれた製法を伝えることで、味や品質の背景が見えるようになります。その価値を理解する買い手に届ければ、価格に納得して選んでもらう理由となり、ブランドの核にもなります。
②
小ロット・専門特化
狙う市場に合わせて小さく試せる
特定の商品に強みを持ち、小回りを利かせられることは、ニッチな市場を狙ううえで武器になります。高級スーパーや専門店など、品質や独自性を重視する売り先に絞り、少量から取引を試すこともできます。ただし、小ロットは輸送費が割高になりやすいため、価格と物流を合わせて設計することが大切です。
③
受け継がれた技術
味と品質で違いをつくれる
発酵、乾燥、加工など、長年磨いてきた技術は、商品の味、食感、品質を支える強みです。その技術がどのような違いを生むのかを、買い手に分かる言葉で伝えましょう。製法の説明に加え、試食を通じて違いを体験してもらうことで、商品を選ぶ理由がより明確になります。
地域の名前を守る仕組みもあります。地理的表示(GI)は、産地と結びついた品質を国が保護する制度です。2026年7月時点で170産品が登録され、このうちの多くがEUや英国でも保護されています。長野県の市田柿は、2024年の輸出額が2016年比で4.5倍に伸びました。※2
中小企業の海外進出でつまずく4つの壁と越え方
地方ならではの強みがあっても、そのまま海外で売れるわけではありません。商品を届け、価値を伝え、利益が残る価格で継続して販売するには、距離と鮮度、人材、価格、認知の4つの壁に向き合う必要があります。自社だけで抱え込まず、冷凍技術と外部パートナーを組み合わせて、実行できる仕組みをつくりましょう。
| 壁 | 起こること | 越え方 |
|---|---|---|
| 距離と鮮度 | 消費期限が短く、遠い市場に届けにくい | 商品に合う冷凍・解凍方法とコールドチェーンを設計する |
| 人材 | 海外商談や貿易実務を担う人材が足りない | 支援機関や実務を担う外部パートナーと役割を分担する |
| 価格 | 輸送費や関税で現地価格が高くなりやすい | 物流などの費用を含め、価値と価格が合う売り先・商品設計を選ぶ |
| 認知 | 商品の価値が伝わらず、取扱いにつながらない | 産地・製法・技術を現地の買い手に伝わる言葉と試食で示す |
特に「距離と鮮度」は、消費期限の短い生鮮品や加工品にとって大きな壁です。冷凍技術を活用すると、商品の品質を保ちながら保存・輸送できる期間を延ばし、遠い市場へ届けられる可能性が広がります。ただし、冷凍するだけでは十分ではありません。商品に合う冷凍・解凍条件を確かめ、製造から輸送、保管、販売まで適切な温度を保つコールドチェーンを整えることが必要です。
冷凍寿司の海外展開は、その具体例です。デイブレイクは、日本から米国への冷凍寿司の海上輸送を実現し、米国の日系スーパー、ミツワマーケットプレイスでの販売につなげました。冷凍技術に加え、輸送時の保冷・断熱条件を検証した取り組みです。※3※4
この事例から地方メーカーの海外展開に活かせるのは、冷凍・解凍後の味や食感、輸送中の温度、売り場での提供方法を一体で設計するという視点です。工場で良い商品ができるだけでなく、現地のスタッフが安定した品質で提供できる状態まで整えることが、継続して売るための条件になります。
人材、価格、認知の課題にも、外部の知見と実行力が役立ちます。貿易実務や商談を担うパートナー、現地の価格帯や商習慣に詳しい卸・販売先と組み、誰が何を担うかを明確にしましょう。輸出先の規制・表示への対応も含め、自社に足りない機能を補う体制をつくることが重要です。
地方の強みを活かして海外へ商品を売る4ステップ
地方メーカーの海外展開は、自社の強みを言葉にし、届ける市場を絞り、小さく試してから広げる順番で進めます。市場の大きさだけで国を選ぶのではなく、自社の商品が選ばれる理由、実際に届く販路、利益が残る価格を合わせて考えましょう。限られた人手と資金は、まず勝ち筋を確かめるために使うことが大切です。
| ステップ | やること |
|---|---|
| 1. 強みを言語化する | 産地・製法・技術が生む価値と、他の商品との違いを言葉にする |
| 2. 市場と売り先を絞る | 商品の価値と価格帯が合う国・都市、高級スーパーや飲食店などの売り先に絞る |
| 3. 小さくテスト輸出する | 少量の輸出や展示会で需要を確かめ、品質・採算・継続注文の可能性を検証する |
| 4. パートナーと広げる | 検証結果をもとに商品と売り方を改善し、物流・販路を持つ事業者と拡大する。JETROなどの支援機関も活用する |
最初は、商品の価値と価格が伝わりやすい都市や売り先に絞りましょう。テストでは、バイヤーや消費者の反応に加え、輸送・保管・解凍後の品質と、輸送費、関税、現地の流通費用を含めても利益が残るかを確認します。試食での好評を継続注文につなげるには、売り場での扱いやすさや安定供給も欠かせません。結果を商品や売り方の改善に反映し、継続注文の見込みが立ってから販路を広げれば、投資の無駄を抑えられます。
産地や商品の背景は、現地の買い手に伝わる価値へと置き換える必要があります。近大マグロの米国市場でのブランディングも、その一例です。製法の珍しさだけでなく、食べたときの違い、使いやすさ、価格に見合う価値まで伝えることで、取扱いや継続購入につながります。
自社は商品づくりと品質管理に強みを発揮し、海外向けの商品設計、輸出実務、物流、販路開拓は外部パートナーと分担する。この体制をつくれば、地方の小さなメーカーでも、海外展開を着実に進められます。
まとめ
地方の食品メーカーには、海外で勝てる可能性があります。その理由は、産地と製法のストーリー、小ロット・専門特化、受け継がれた技術という3つの強みです。
その強みを海外での売上につなげるには、距離と鮮度、人材、価格、認知の壁を越える仕組みが必要です。冷凍技術で届けられる市場を広げ、外部パートナーと必要な機能を補い合うことで、規模や立地の制約を越えて挑戦できます。
まずは自社の強みを言葉にし、その価値が伝わる市場で小さく試すことから始めましょう。
この記事の監修者Blue Polaris CEO片山 良宏
アクセンチュアで製造・流通業界 日本統括Managing Directorとして、消費財・食品・小売業を中心に50件以上のプロジェクトを統括。デイブレイク株式会社 取締役副社長 兼 DayBreak USA CEOとして、特殊冷凍技術を活用した海外事業をゼロから立ち上げ、バリューチェーン全体を牽引した。プロフィール ›