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海外販路を開拓する方法には、展示会への出展や商社との連携、現地企業への営業など、さまざまな選択肢があります。しかし、同じ方法で米国市場に挑戦しても、販路を広げられる企業と、思うように成果につながらない企業があります。その違いは、商品の良し悪しだけでなく、市場の選び方や販売先へのアプローチ、商談前の準備にあります。本記事では、米国食品市場で販路を築く日本企業に見られる3つの特徴と、営業前に確認しておきたいポイントを解説します。
この記事でわかること
- 売れる企業は、目的に合わせて「日系・アジア系」か「米系メインストリーム」かの入口を先に決めている
- 売れる企業は、仲介業者が売りやすい英語資料・ラベル・販促費を商談前にそろえている
- 売れる企業は、初回の受注で終わらせず、安定供給と現地での販促を続ける体制を持っている
- 売れない企業の多くは、取引を始めてから米国の商流と費用構造を知る
海外販路開拓の方法は「入口の商流」選びから
米国で売れる日本企業は、最初に「どの商流から入るか」を決めています。米国は日本の農林水産物・食品にとって最大の輸出先です。2025年の米国向け輸出額は前年比13.7%増の2,762億円で、2年連続の首位でした。※出典:農林水産省
2,762億円
2025年の米国向け農林水産物・食品の輸出額
13.7%増
前年からの伸び(関税措置が導入された年)
2年連続
日本にとって最大の輸出先
ただし市場が大きくても、どの売り場にも同じ方法で入れるわけではありません。米国の食品流通は、大きく2つの入口に分かれます。
| 日系・アジア系市場 | 米系メインストリーム市場 | |
|---|---|---|
| 主な売り先 | 日系・アジア系スーパー、日本食レストラン | 米系スーパー、ナチュラル系チェーン、一般のレストラン |
| 主な仲介役 | 日本食品を扱う輸入卸・ディストリビューター | ブローカーとディストリビューター |
| 参入のしやすさ | 比較的入りやすい | 参入障壁が高い |
| 求められる準備の例 | FDA施設登録、英語の裏面ラベル、英語の販促資料 | 左に加え、英文パッケージ、生産者認証、大量供給体制、棚代などの販促費 |
ブローカーとは、食品メーカーとバイヤーの間に入り、商品の発掘から棚に並べる交渉までを担う仲介業者です。この役割は、ホールセラー(卸売業者)が担う場合もあります。ディストリビューターは、輸入した商品を保管し、小売店や飲食店へ届ける卸売業者を指します。
売れない企業に多いのは、入口を決めないまま展示会に出て、声をかけてきた相手と取引を始めるケースです。
よくあるケースをいくつか紹介します。
米国の展示会でブース来訪者からとてもいいコメントをもらった。名刺交換もした。サンプルも、高い航空便代を払って送り、先方に気に入ってもらえた。「それではどこで買えるのか?」と聞かれて「まだアメリカでの販売網ができていない」と言ったらそれっきりになってしまった。
日本の展示会で知り合った米国リテーラーのバイヤー。「アメリカでも売りたいのか?」と聞かれたので「もちろん!」と答えた。そのバイヤーに「アメリカに輸出できる商品なのか? FDA・USDAの規制に準じた、英語での原料表示やアメリカの消費者向けの英語でのパッケージはできているか?」と聞かれたので「えっ? そうなんですか? そこまでこちらで準備しなければいけないのですか?」と答えたら、そのバイヤーはニコッと笑って立ち去っていった。
商品をアメリカに海上コンテナで持ってきた。日系卸売大手との契約はしているが、そこを通じてなかなか商品が動かない。メインストリーム市場に打って出れば量が動く、と誰かにアドバイスされたのでそうしたいが、メインストリーム市場のバイヤーにコンタクトしても全く相手にされない。そうこうしているうちに賞味期限の残りが4カ月になってしまい、結局はアジア系の在庫処分業者にタダ同然で引き取ってもらい、米国事業から撤退した。
こういったケースを避けるためにも、日系・アジア系で実績を作るのか、最初から米系メインストリーム市場を狙うのかを決めれば、選ぶべき相手と前もって必要な準備が見えてきます。
海外食品営業の方法|バイヤーが見る3つの準備
米国のバイヤーは、味だけでなく「このまま棚に並べられるか」を見ています。売れる企業は、商談の前に次の3つをそろえています。
①
英語の営業資料
商品の特徴、価格、ケース入数、賞味期限などを1枚にまとめた英語資料(Sell Sheet)を用意します。仲介業者は、この資料を使って小売のバイヤーに提案します。
②
米国の規制に合ったラベルの準備と登録
米国へ食品を輸出するには、製造施設のFDA登録や、米国の基準に合った英語の食品表示が必要です。FDAは米国食品医薬品局のことで、食品の安全を管轄する機関です。
③
販促費と供給量の見通し
米系チェーンでは、棚に並べるための費用(スロッティングフィー)やブローカーへの報酬がかかります。ジェトロの事業でも、米系参入を目指す企業の条件に、販促費の用意や大量供給体制が挙げられています。※出典:ジェトロ
準備がそろうと、仲介業者に選ばれやすくなります。ジェトロは2025年10月から2026年3月にかけて、日本の食品メーカーと米国のブローカーをつなぐマッチング事業を実施しました。ブローカーに紹介された約60社のうち、ブローカーに選ばれて個別商談に進んだのは27社でした。※出典:ジェトロ
商談では「日本で売れています」と品質を語るだけでは足りません。仲介業者が知りたいのは、自分たちが売るための材料と条件がそろっているかです。価格は、輸送費や仲介業者の取り分を含めた現地の店頭価格から逆算して示すと、話が早く進みます。
海外進出の成功例に共通する「売った後」の仕組み
売れる企業は、初回の受注をゴールにせず、売れ続ける仕組みまで用意しています。米国では棚に並んだあとも、欠品なく届け続けることと、消費者に商品を知ってもらう販促が求められます。どちらかが止まると、棚を維持しにくくなります。
中小企業の海外進出では、受注したあとに供給や販促が追いつかず、取引が続かない例もあります。商談の前に、受注後の物流と販促の計画まで描いておけば、撤退のリスクを抑えられます。
まとめ
米国の食品市場で売れる日本企業と売れない企業の違いは、商品の良し悪しより「入り方」と「続け方」にあります。入口の商流を決め、仲介業者が売りやすい準備をそろえ、受注後の供給と販促まで計画しておくことが、海外販路開拓の近道です。自社はどの入口から始めるべきか、まずは現状の整理から始めてみてください。
この記事の監修者Blue Polaris CGONick Sakagami
ロサンゼルスとニューヨークを拠点に複数の水産物輸入商社・卸売事業を創業し、マグロ専門輸入商社を年商40億円規模へ成長させたほか、近大マグロの米国市場でのブランディングにも成功。日本産鮮魚のほぼ全米への週次供給網も構築した。プロフィール ›